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小笠原梅園 七折小梅

梅の香りが人々を魅了する町、七折の歴史を見守り続けてきた男。

この小さな黄色い梅の実が、地域の宝になるまで。

愛媛県砥部町は、白磁に透きとおった藍の模様で全国でも人気の高い「砥部焼」の里。その砥部町の七折(ななおれ)地区は、良質な梅の産地として古い歴史があります。

この地で50年以上も梅を栽培している小笠原さんは、七折地区が梅産地として根付く礎を築いた人物のひとりです。古くは伊予柑や温州みかん、柿などが盛んに栽培されていたこの地に、昔からあったといういくつかの梅の樹。この梅が大変に美味しく、珍重されていたことから「地域に梅を広めてはどうか」と思いついたのが先代。おじいさんの代から造園業を営んでいたことから、果樹の性質はもちろん、地域の気象条件や土壌との相性に精通しており、この地での梅栽培に手応えを感じていたのでは、言います。

当時はまだ戦中で、畑で作ると言えば芋か麦の時代。ところが、七折の梅で作った梅干は、軍隊に提供されるほど好まれていたのだそう。現在でも七折地区に水田はなく、みかん専業農家はわずか数件。まさに地域全体が「梅一色」という珍しい地区なのです。

樹齢50年を超える大木が、地域のシンボルツリーになった日。

しかし、梅を根付かせるといっても、ただ植えれば良いと言うわけではありません。より良い果実を育て、経済として発展させるための知識や技術は全く無い状態でした。古くから柑橘を柱としていた愛媛の果樹界には、梅の技術蓄積は無かったからです。そこで、小笠原さんを含む地域の有志が徳島県果樹試験場の門を叩きます。県外からの指導依頼を快く引き受けてくれた徳島県の担当者から、基本的な栽培技術が伝授されることとなりました。当時は高速道路もなければ、一般道でさえも現在のように整備されている時代ではありません。隣県とはいえ山越えのある愛媛-徳島間は大変な距離と時間がかかったといい、前日の夜に出ても、到着は朝、という状態だったとか。こうした「徳島詣で」は、幾度となく繰り返されたそうで、地域の発展を願う有志の皆さんの信念の強さが窺えます。徳島から持ち帰って植えた鴬宿の樹は、現在もキャリー25杯分の梅の実をつけるのだそう。圧倒的な大きさです!

熟練の手で摘む極上の一粒。安全な栽培方法にもこだわりが。

徳島試験場で全国の梅を調査した結果、「大梅は和歌山県の南高梅がベスト、小梅は七折が最高」と評価されたことで、一気に七折小梅の栽培が広がりました。

「七折小梅」いう呼び名は、地域の人々により25年前につけられました。和歌山に非常に良く似た品種があるとのことで調べたところ、やはり七折の梅だけの特徴があることがわかりました。それは「種の小ささと果肉の柔らかさ」。同じサイズでも種が小さいことで果肉の量が格段に多くなり、果肉の質が緻密で柔らか。これは梅干にすると良くわかるのだそう。

6月のわずか2週間で行われる収穫作業には、地域や隣町からのパートさんが従事しますが皆さん熟練ばかり。的確な見極めで、次々と手摘みしていく姿は鮮やかです。もちろん選別も人の手と目で行われ、高い品質を維持しています。20年前に始めた「梅まつり」は、当時は珍しい「地域農業イベント」。実際に梅一面の産地を見てもらうことで、知名度、地域ブランド力のアップに繋がったと言います。先人の思いを今に伝え、後世に引き継ぐという大役を担う小笠原さん。80歳の元気な笑顔です。

 

砥部町というところには、独特の空気感があります。松山市内からそう遠くはないのですが、「農業」の香りと「文化」の香りとが混在するのどかな雰囲気です。
毎年恒例の「梅まつり」ですが、「せいぜい4~50台ほど車が来れば十分成功」と思っていたところ、道が塞がれてしまうほどの盛況ぶりを見せたのだそう。地域に働きかけ、道路の拡張やイベント広場の整備などが次々と行われ、現在では動員数4万人という大きな催しにまで成長しました。当時は先駆的と思われた人々の熱い思いが、地域そのものを大きく動かしました。
「農業をやりはじめたきっかけは何ですか?」と小笠原さんに尋ねたら、「兄が戦死したから」というお答えで、思わず絶句しました。そんな時代から脈々と引き継がれてきた地域の特産品。しかも抜群の商品力です。ほとんど県内で消費されていた「宝物」のような梅の実が、さらに広く全国に知られるようになって欲しいと思います。

商品パッケージはすべて奥様のデザイン。温かみのある優しいタッチが七折小梅のイメージにぴったり。 収穫作業の合間に、楽しいおやつタイム。限られた期間だけの仕事仲間ですがお馴染み同士の絆は深く。 梅酒や梅肉用に人気の高い青梅。品種は鴬宿で、地元では古くから愛される器量よしの大梅です。
もっと美味しく!食財メモ

小笠原梅園の梅干は、干さないで作るいわゆる「梅漬け」。たしかに梅干ならではのシワが無く、ふっくらと溶けるような舌触りが特徴です。七折小梅だからこそできる作り方なのだとか。使用する塩の種類にこだわって「食べるとほんのり甘く感じて、いくらでも食べられる不思議な梅干」の商品化も。20年前から様々な梅の加工品を作ってきた小笠原さんの奥様。中でも自信作「梅大福」は、小梅を絶妙な加減に甘露煮したものを包んだ幻のお菓子。現在は梅まつりの時にだけ特別に販売されているそうです。
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