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遊子水荷浦 じゃがいも

TEL:0895-62-0091

歴史ある段畑で作られるじゃがいも。この景観こそが無比の価値観。

まるで、そびえ立つ巨大な城壁のごとき「水荷浦の段畑」とは。

段々畑のことを、宇和島地方では一般的に「段畑(だんばた)」と呼びます。
ここ遊子の水荷浦の段畑は、わずか1メートルほどの幅の畑が海を臨んだ斜面に沿うように規律正しく階段状に開墾されたもので、江戸時代の終わりころからこの景観を保っています。
海抜80メートルとも言われる圧倒的な高さが、この段畑の美しさの秘密。段数は60段、最も傾斜のきついところで46度と算出されています。実際に畑に立ってみると、その幅の狭さに足元がおぼつかない上、海へ向かって放り出されるような感覚に陥るほどの急勾配です。
この風景を楽しむために、年間を通じて県外からも多くの観光客が訪れるこの水荷浦の段畑は、永年ここに暮らす人たちの日々の生活に根ざした身近な景観である上、今後受け継がれていくべき貴重な財産として、文化庁により国内で3例目の「重要文化的景観」に選定されました。
ここで暮らし、ここで段畑を守る活動をしているのが、「NPO法人段畑を守ろう会」の松田さんです。

代名詞ともなった「早掘りじゃがいも」。

「この段畑は人々の暮らしの象徴。先人の苦労がそのまま伝わる風景なんです。」
古くから豊かな漁場であった宇和海。沿岸部の集落のひとつだった水荷浦は生活水が乏しく、嫁いでくる際にはまず水を担いで運んできたと言われることから、その名がつけられたのだそうです。暮らしのためのサツマイモ作りや養蚕が行われてきたのが、この石段積みの畑だったのだそう。
昭和29年からこの石垣の畑そのままにじゃがいもの栽培が始まります。近隣のじゃがいもは4月下旬から5月にかけての収穫ですが、水荷浦では4月初旬に収穫が可能なことから高値での取引が叶ったからです。早掘りしても美味しい理由は、ダントツの日当たりと水はけの良さに加え、石が太陽の熱を吸収して土を暖め、熱を保つことで夜間の温度低下を防ぐから。海から吹きつける潮風が甘みを出すのか、ホクホクと味のあるじゃがいもになるのだとか。ここではじゃがいものみを栽培しており、精品率の高さも特徴です。

柔でいてなお強固な、この石垣の知られざる秘密。

長い歴史を経て受け継がれてきたこの段畑。実際に近づいてみると、積み上げた小石はセメントで固められているわけでもなく、どこか心許無い印象。しかし、松田さんによるとこの石垣が崩れない明確な理由がありました。
「まず、大きな地震や台風が来ない。雨量が少ないからでしょう。」さらに「谷積みの空積み(モルタルなどで埋める練積みに対して)で、この工法は現在の土木共通マニュアルにはない特殊な積み方」なのだそう。どこかミステリアスな雰囲気です。
駒澤大学の調査によると、石垣のある場所とない場所とでは、夏場で最大7度の地温差があることがわかっています。じっくりと日を浴びて温まることで、冬場でも1~2度の差があり、この差は芋の生育に非常に大きな違いが出るとのこと。
歴史が育てたこの味わいを求めて、春恒例の収穫祭には多くの人が毎年訪れ、石垣に新たな足音を刻んでいます。

数年前に初めて水荷浦の段畑を訪れ、その壮大な石積みを見上げた時には言葉が出ませんでした。さらに実際に階段を上り、逆に石垣側から海を見渡してみると、全く別の感情に襲われ、さらに言葉を失いました。じゃがいも畑に身を置いていると、悠久の歴史の流れの中にちっぽけな自分が飲み込まれていくようで、感動とともに身震いするような不安を感じた覚えがあります。立地、気象条件などからじゃがいもの味わいが良いことは当然なのですが、実際にこの地に足を運んでこその価値観であることは間違いありません。
早堀りであること以外に、皮ごと食べられることで、その独特のほのかな苦味がスパイスとなって楽しめることも、このじゃがいもの特長。肉じゃがのように味付けして煮込むのではなく、丸ごと蒸して塩などで食すのが何より、と地元の皆さんは口を揃えておっしゃいます。

谷積みの空積みといわれる独特の積み方。長い歴史の中で崩れることなくその姿をありのまま留めています。 石灰やもみがらを加えた土は、ふんわりと柔らかで通気性がよくなります。マルチ敷きも重労働! 抜群の日当たりの良さゆえに、草引きは重要な作業。腰をかがめて軽々動く高齢の生産者の手馴れた様子。
もっと美味しく!食財メモ

段畑で春に収穫されたじゃがいもを主原料とした焼酎「段酌」。じゃがいもの旨みを閉じ込めた本格焼酎ですが、一般的な芋焼酎に比べると芋臭さが少なく、女性にも飲みやすいスッキリした味わいだと評判です。
販売は段畑横で開設されている直売所でのみ行われています。「遊子へ来て、段畑へ登った感動とともに味わって欲しいから」とは松田さん。段畑の全てを体感することで、さらに焼酎の美味しさがアップするのかもしれません。
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