三島神社の鯛寄せ石(四国中央市)

余木崎の磯の近くに「鯛寄せ石」という岩がありました。その岩の「月」「日」というくぼみには、干潮に行くと、二匹の鯛が泳いでいました。それを知っていた漁師は、その岩に行き鯛を捕って、中田井の長者に売っていました。長者は、漁師からその話を聞くと、その岩がほしくなり、千個の一斗樽に綱をつけて岩に結びました。満潮になると、岩は樽の力で浮かんだので、浜まで運んで自分の屋敷の庭石にしました。長者は、岩を庭に置いて楽しんでいましたが、子孫が三島神社に奉納したといいます。


御前様と漁師(新居浜市)

多喜浜に住んでいた漁師は、年の瀬が迫ってきたのに、一匹の漁もなく困っていました。そこで、社に祀られている「御崎さま」という神に明日の漁を祈りました。すると、どこからか「早朝にこの社に来い。池に鯛を泳がしておく」という声がしました。漁師は、早朝に池をのぞくと、三十匹あまりの鯛が泳いでいました。漁師は神様に感謝し、町に売りに行きました。それが毎日続き、漁師は大金持ちになって世の人々に尽くしたといいます。


庄屋とカッパ(新居浜市)

新須賀に「御引」という淵があり、そこにはカッパ(えんこう)が住んでいました。村の庄屋がその淵のそばに馬をつないでおくと、カッパが馬を淵に引き込もうとします。馬はびっくりして急に跳ね上がったので、カッパの頭にある皿の水が出てしまいました。急に力がなくなったカッパは、馬に引きずられて庄屋の家に連れていかれました。庄屋は、悪いことをしないようにとカッパを諭し、許しました。次の日から、カッパはお礼にと毎日鯛を持ってくるようになったのですが、女中がカッパを叱ったところ、鯛が届かなくなったといいます。


片目の鯛と狸(今治市)

桜井の浜に狸がいました。この狸は、漁師が鯛を捕ると片方の目玉だけをくりぬいて食べていました。漁師は、鯛が売り物にならないので、狸を捕まえて殺そうとしました。すると、狸は命乞いをして「あなたが捕った鯛は、必ず売れるようにします」といいます。狸は修行僧に化け、家々の門に立って経文を唱え、「今年は悪病が流行るので、片目の鯛がそれに効く」とふれ回りました。片目の鯛が高値で売れ、漁師は大もうけをしたといいます。


カッパの狛犬(西予市愛明浜町)

戦国時代、高山城主の宇都宮正綱が、ある夜、城に帰ろうとするとナニモノかに抱きつかれました。正綱が組み伏せると、それはカッパでした。「二度と悪さをしない」とカッパは正綱に許しを乞い、山に逃げ帰りました。その翌朝から城の前に鯛が置かれるようになりました。ある日、家臣が鯛を吊るすために鹿の角を取りつけると、鯛が届けられることはなくなったといいます。その後、正綱が戦死した時には、カッパの悲しい鳴き声が聞こえたといいます。明浜町の若宮神社は宇都宮正綱を祀った神社で、カッパの狛犬が置かれています。


漁師とカッパ(愛南町)

由良町にカッパが住んでいました。ある日のこと、カッパはアワビに指を挟まれはずれなくて困っていました。通りかかった漁師は、カッパをかわいそうに思い、アワビをはずしてあげました。その翌朝、漁師が起きると、家の軒先のカギに一匹の大きな鯛が吊るされていました。毎日、鯛は届けられましたが、カギが古くなったので、鹿の角をカギの代わりに取りつけると、鯛が届けられることはなくなったといいます。カッパは鹿の角が大嫌いなのだそうです。(同様の話は宇和島以南に広く伝わっています)


Copyright えひめ愛フード推進機構 All Right Reserved.